ネズミを駆除しようとして調べると、「ネズミは鳥獣保護法の対象外だから、許可なく駆除できる」という説明によく出会います。
ただ、この説明には少し足りないところがあるんですね。
鳥獣保護法から除外されているのは、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種類だけで、ネズミ全般が対象外というわけではありません。
この記事では、条文まで確認しながら、どこまでが正しいのかを整理していきたいと思います。
ネズミ駆除全体の流れは、こちらにまとめてあります。

「ネズミは鳥獣保護法の対象外」という説明は、少し足りない
まず、よく見かける説明を確認しておきます。
「ネズミは鳥獣保護法の対象外」「ネズミに鳥獣保護法は関係ない」
こうした書き方は、業者サイトにも自治体の要約にもよく出てきます。
大きく間違っているわけではありません。
ただ、正確に言うと、対象外なのはネズミ全般ではなく、特定の3種類だけです。
この違いは、次の章から条文で確認していきます。
ネズミは「鳥獣」に含まれている
そもそもの前提を確認しておきます。
環境省の公式サイトでは、鳥獣保護管理法における「鳥獣」を「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と定義していると記載されています。
哺乳類であるネズミも、この定義には含まれます。
ネズミが含まれるようになったのは、平成14年の法改正からでした。
環境省によると、平成14年の法改正により、ネズミ・モグラ類と海棲哺乳類が「鳥獣」の概念に含まれることになった、とのことです。
つまり、ネズミは最初から鳥獣保護法の対象に含まれているのが出発点で、そこから一部が除外される、という仕組みになっているわけですね。
これを踏まえて、除外の条文を見ていきます。
除外の条文
除外の根拠になっているのは、法律の条文そのものです。
出典が法令なので、ここでは条文をそのまま引用します。
法第80条第1項
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律、第80条第1項はこう定めています。
この法律の規定は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるものについては、適用しない。
読んでのとおり、ここにはまだ具体的な動物の名前は出てきません。
「環境省令で定めるもの」という形で、具体名は別の規則にゆだねられています。
施行規則第78条
具体名が出てくるのは、この法律の施行規則です。
施行規則第78条は、次のように定めています。
法第八十条第一項の環境省令で定める鳥獣のうち、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣は、次の表に掲げる鳥獣とする。
そして表には、ネズミ科として次の3種が学名つきで挙げられています。
- ドブネズミ(ラトゥス・ノルベギクス)
- クマネズミ(ラトゥス・ラトゥス)
- ハツカネズミ(ムス・ムスクルス)
この3種だけです。
ネズミ科には他の種もいますが、施行規則に書かれているのはこの3種類だけなんですね。
ネズミ以外の動物が鳥獣保護法でどう扱われているかは、こちらで動物ごとにまとめています。

出典:e-Gov法令検索「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」/e-Gov法令検索「同法施行規則」/環境省「鳥獣保護法の概要」
家の中のネズミなら許可は要らない
条文の確認はここまでです。
ここからは、実際どういう扱いになっているのか、自治体の案内を見ていきます。
南あわじ市の公式サイトでは、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種は鳥獣保護管理法の対象から外れているため、これらを駆除する際に捕獲許可は不要だと案内されています。
神奈川県も、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミについては法律の適用を受けないため、時期を問わず捕獲できると説明しています。
つまり、家の中で見かけるネズミがこの3種であれば、駆除に許可はいらないということになります。
では、家の中に出るのはこの3種類なのか、というところですが、それは荒川区の公式サイトに掲載されています。
日本には数十種類のネズミが存在していますが、屋内に定着するのがドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種とのこと。
鳥獣保護法で対象外の3種です。
見分け方をもう少し詳しく知りたい場合は、こちらを見ておくといいと思います。

なお、この記事で扱うのは、あくまで法律上どこまでできるかというところまでです。
捕獲器具や殺そ剤の選び方は、こちらにまとめています。

野ネズミは対象のまま
ここまでは、対象外になっている3種の話でした。
ここからは、逆に対象のまま残っているほうの話です。
施行規則第78条に書かれているのは、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種だけ。
ということは、ネズミ科のそれ以外の種は、鳥獣保護法の対象ということになります。
冒頭で触れた「ネズミは鳥獣保護法の対象外」という説明が足りていないのは、ここなんです。
ただし、例外もあります。
神奈川県は、農業や林業への被害を防ぐ目的に限って、ネズミ科全種やモグラ科全種を随時捕まえることができるとも案内しています。
これは、あくまで農業・林業の被害防止という目的に限った話です。
家の中に出るネズミを駆除する、という場面とは前提が違いますので、分けて考えたほうがよさそうです。
ほかの動物は事情が違う
屋根裏や庭先で見かける動物は、ネズミだけとは限りません。
イタチ・ハクビシン・アライグマは、捕獲するのに許可が必要な動物です。
コウモリは、捕獲や殺傷が原則として禁止されていて、罰則もあります。
ネズミの3種だけが、許可なく駆除できるという点で例外的な立ち位置にいるということですね。
屋根裏にいる動物の正体を絞り込みたい場合は、こちらを参考にしてください。

追い出す方法については、こちらにまとめています。

よくある質問
Q. ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミなら、届出も何もいらないのですか?
南あわじ市や神奈川県の案内でも、捕獲許可が不要という点までしか書かれていません。
それ以上の手続きが必要かどうかは、お住まいの自治体に確認しておくと安心です。
Q. 家にいるのがどの種類か、見た目で分かりますか?
葛飾区の資料には、生息場所やハツカネズミの体長といった手がかりが載っています。
詳しい見分け方は、こちらにまとめてあります。

Q. 野ネズミと、家に出る3種の違いは何ですか?
施行規則で除外されているかどうか、という法律上の扱いの違いです。
ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種は除外されていますが、それ以外のネズミ科は対象のままとされています。
Q. 捕まえたネズミはどうすればいいですか?
ごみの区分は自治体によって異なります。
お住まいの自治体の案内に従ってください。
Q. イタチやハクビシンも、同じように許可なく駆除できますか?
いいえ、事情が違います。
イタチ・ハクビシン・アライグマは捕獲に許可が必要で、コウモリは捕獲・殺傷が原則禁止です。
詳しくは、屋根裏の動物についての記事をご覧ください。

出典:神奈川県「野生鳥獣保護の仕組み」/南あわじ市「ネズミの駆除にも捕獲許可は必要ですか?」/葛飾区「ねずみ駆除の手引き」/荒川区「ネズミの上手な退治法」


